夫婦別姓

2022/08/24(note投稿 2022/10/12

去年12月から今年1月にかけて行われた内閣府の選択的夫婦別姓に関する世論調査について、「選択的夫婦別姓に反対の世論結果が出るように質問内容が替えられた」という報道が相次ぎました
 共産党ウォッチャー(支持者ではなくむしろ逆)の人に教えられて一昨日(8/22)の小池さんの記者会見を見てみると、「こういう世論誘導までやって選択的夫婦別姓に反対してきた(趣旨)」と息巻き、例によってこれが旧統一教会の意向を反映したものだという最近はやりの「鉄壁の?」プロパガンダをやっていました

 もともとの情報ソースは女性活躍担当大臣(当時)の野田聖子氏です

今回の世論調査質問内容と結果はすぐに出てきました。但し、この内容も素直に、率直に記載されていたのは、私が探していた中ではNHKのNEWS WEB 3/25の記事だけでした

「夫婦同姓の制度を維持した方がよい」 27%
「夫婦同姓を維持したうえで
 旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」 42%
「選択的夫婦別姓の制度を導入した方がよい」 29%

 この質問の選択肢の内容と結果をはじめて見た時、私はこれがもともとの選択肢の内容で、ここから世論誘導を行う内容に変えられたのではないかという錯覚に陥りました。どこがどう変えられたのかについては、最初、どこを探しても出てきませんでした
 野田さんは上記3つの選択肢の内容が非常にわかりにくく、無責任だとして
「旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」というのは一体何だかわからないと発言したそうです
 でも、わたしには野田さんの発言自体が意味がわかりません
 通称使用についての法制度を設けた方がよいという表現をめぐって、反対派
の議員から理不尽な圧力があったという話がさかんに喧伝され、通称使用の法整備は何もやっていないので項目内容にいれるべきではなかったという見解(選択的夫婦別姓の制度も何の法整備もやっていませんが・・)がメディアの中ではまことしやかに語られていました

YouTubeでもとの質問内容をそれらしく紹介されていたものもありましたが、正確な詳細ではなく、結局私が見つけることのできたのは、内閣府大臣官房政府広報室のホームページにあった公式情報だけでした
以下がその選択肢の内容です

「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」

「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ
名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」

「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそ
れぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」
——————————–
「必ず同じ名字(姓)を名乗るべき」と「改める必要はない」と打ち消す形・・・「婚姻をする以上」って、その話をしているのに改めて挿入されると「婚姻
とはこういうものだ」という「強い意思を持っている人」向けだけのような印象を受けます
「婚姻前の名字を・・・希望していても」「同じ名字(姓)を名乗るべき」
             ・・・なぜか、こう強調してしまうんですね・・・
cf.「希望している場合には」「改めてもかまわない」という肯定の形だけ

・・・たとえば3つ目にある別姓導入の選択肢「婚姻前の名字(姓)を名乗ること
ができるように法律を改めてもかまわない」を、ほかの2つの選択肢にあったように「やるべきだ」という枠をはめて「婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めるべきだ」とすると推進活動家賛同者向けになってしまい、別姓にしたい人はそうすればいいという人たちが選択しにくくなってしまいます
・・・前の2つがはじかれ、ここに意見が集まるように慎重に考え抜かれた質問内
だと思います

全然知りませんでしたが、ひどくないですか?
散文文章として、負荷なくまともにサラっと読めるのは、最後の選択的夫婦別
姓に法律を改めてもかまわないという選択肢だけ・・・
「質問者の選択的夫婦別姓の制度を導入した方がよいのだという意思」がこれ
ほど露骨に選択肢の内容に折り込まれているとは思いませんでした
このもとの質問内容がどこを探しても出てこなかった理由がわかりました

 内閣府は「(以前の)質問内容について「わかりにくい」などといった指摘が寄せられたことを踏まえ、一部変更した」とのことですが、当然そういう意見は出てくるでしょう。しかし、ネット界隈では火付け役の野田さんの「今回の質問内容がわかりにくい」という発言をもとにしたテンプレ通り「わかりにくくなった」という意見であふれかえっています。彼らはもとの質問内容を読んだのでょうか
 党内でこれまで誰も何も言わなかったのかと不思議だったのですが、関連記
事をあさってみると、確かに「選択的夫婦別姓制度の導入を誘導している」という指摘はあったようです
 また、この質問内容で選択的夫婦別姓の意見が増えてきたので質問内容を変

えたのだという記事もありましたが、これも少し事実とは違います
 平成13年(2001年)に「夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることが
できるように法律を改めてもかまわない」が一度42.1%に跳ね上がったあと、平成18年(2006年)36.6%、平成24年(2012年)35.5%と少し低空飛行をしてから平成29年(2017年)に42.5%と再び16年ぶりに戻ってきたわけで「順調にだんだん増えてきた」ようなイメージはありません

蛇足ですが、今回の調査結果で私が興味を持ったのは、夫婦の姓が異なることによる子への影響に関する意識のクロス分析です

夫婦の名字が異なることについて、
          子どもに好ましくない影響があると思う 69.5%
夫婦の名字が異なることについて、子どもに影響はないと思う 30.5%

→→(ここも「子供に対する影響」という一大事の有無を聞いてこの数字に押
さえられていますが、「夫婦の名字が異なることは子どもには好ましくないと思う」と「夫婦の名字が異なっても子どもには特に好ましくないとは思わない」という風に普通に聞かれた場合には、2つの選択肢の差はもっと大きく開くことになったでしょう)

「子どもに好ましくない影響があると思う」人のうち、18.8%が夫婦別姓導入に賛成の人ですから全体の13%、1割を越える人が「夫婦別姓導入には賛成するが、夫婦の名字が異なることで子どもに好ましくない影響があると思う」という人だということですね。自分は「別姓にしない(子供などには)別姓にさせない」ということでしょうか
(高校の時、お母さんと本人の名字が違う男の子がいて、たまたまそれがわかる
場面に出くわした時に、思わず「あ、なんで?」と聞いてしまったことがあります。男の子は「親が離婚したからね、自分の名字は父親の方」と答えてくれましたが、じゃあ何でお母さんと一緒の名字にしないのだろう、できないのかしらと思いました。うちはやんごとなき家系でも何でもありませんから、男系でも女系でもどちらでもいいのですが(父親の名字でも母親の名字でもどちらでもいいのですが)わたしは家族で名字が違うのは絶対嫌だなと思いました…)

 こういった「アンケート」は肯定的な聞き方の方が賛同しやすいという観点から見ると「同姓を維持した方がよい」と「別姓制度を導入した方がよい」というように両方とも肯定的に対比させて、その中間の旧姓使用の法制化の選択肢も肯定的な言い方の前提からはいった今回の方がはるかに洗練されてフェアな内容であることは議論を待ちません
 しかし、この程度の聞き方の違いで結果が変わったのだとしたら、結局それほ
ど強い賛成、反対の意思を持っていない人がそれだけいるのだということなのかもしれません
 ごく一部の人を除いて別姓を望む人はいないので、別姓の制度ができても日
本会議や女性の会が言うように今の家庭のあり方に深刻な影響を与えることはないでしょう。だからそれほど制度を変えたいなら変えればいいじゃないかというのが自民党賛成派の考えで、賛成の意思表示をする国民の多くも(自分のことではないというところで)同じ気持ちだろうと思います

ところで、
 今熱心に別姓を推進している方たちも同じ気持ちなのでしょうか
 ごく一部の人の希望をかなえるためだけにこれほど大掛かりに何年も何年も運
動を続けているのでしょうか

真意である目的(仮説)・・・ 
 メディアによる同姓を選択する国民への厳しい意識改革誘導、編集権を盾に
した実質的な言論封殺、それを何年も何年も繰り返して繰り返して、やがて同姓にする人がそれを口にするのさえ憚られる同調圧力の社会・・・を目指しているのではないか、というのは杞憂でしょうか
 選択的夫婦別姓が導入されたら、次に必ず別姓を希望しない女性に対して
「ジェンダーバイアスがかかっている」との攻撃がはじまり、「社会の同姓選択への無言の同調圧力」への告発がはじまり、それをメディアが全面的にバックアップして同姓選択希望の男性をフルボッコにして、傾向のある「専門家」がもっともらしい理屈をつけ、女性の目にする書物には関係の特集が何度も何度も組まれて別姓選択を誘導する・・・というような未来のひとつの世界線を像する人もいますが、これは見当はずれの妄想でしょうか?
 もしも杞憂でも妄想でもなく、この目的が間違っていないのなら、現在まで
の活動のアナウンス内容は極めてアンフェアで、宗教団体であることを隠して勧誘する話題の「宗教団体」と変わりません

 強硬に反対する意見というのは、推進派が目指す社会への疑念を杞憂だとは考えてはおらず、現実的な予測として、既定路線としてこれと向き合っているわけです。似たような前例もいくらでもありますから
 ですから「個々の希望者の願いをも拒絶する反対派」という認識で話をはじめて
しまうと、話がかみ合うことはありません。ほとんどの場合、「個々の希望者の願い」は拒絶していないからです

【旧統一教会とのかかわりについて】

野田聖子さんが「告発」してから半年近くたって、今回改めて思い出したように選択的夫婦別姓の世論調査の質問内容が取りざたされたのは、間違いなく先月の安倍氏の事件に続く旧統一教会の問題・・・共産党の小池氏などがやっている、旧統一教会の意向を反映したものだという最近はやりのプロパガンダにメディアがそのまま先導された結果だと思います
最近は、なんでもかんでも統一教会です
先日(8/17付)の東京新聞では「スパイ防止法(制定促進)国民会議」が統一教だとする誤報記事まで掲載しています(それを言うなら発足させたのは統一教会ではなく日本会議です)

浮足だっている人は、まず、紀藤正樹氏が所長を務めるリンク総合法律事務所の弁護士「ヤマベン」こと山口貴士氏のこんなTweetを読むべきではないのかな、と思います

夫婦別姓反対も、同性婚反対も、LGBT差別も、憲法改正も統一協会の専売特許ではないし、統一協会より影響力の強い勢力は幾らでもいる。特に、憲法改正は自民党の立党以来の悲願である
自民党を攻撃するために、統一協会の影響力を過大評価することは、統一協会
を褒めることに等しい
統一協会側は信者に対し「統一協会はこんなに自民党に強い影響力があるんだ
とアンチさえも認めている」などと信者の引き留めや献金をさせるために士気を煽る材料にしてしまう・・・問題解決の足を引っ張るだけである
(筆者注:引用中の山口氏の言うLGBT差別はありません)

 僭越ながら、大きな勘違いをしている人が多いと思うのですが、統一教会は政府自民党の方針をねじ曲げさせて、大きく変えさせるような力は爪の先ほどもありません。750万もの集票力をもつ創価学会とは違います

現に2012年、日本人女性信者1200人に韓国各地で「慰安婦問題に心からお詫びします」と訴えさせ、日本政府の謝罪を促す署名運動までさせていたことや「徴用工被害者」の前で子供の信者に謝罪の手紙を涙ながらに読ませるといったリベラルの意見に沿う行動はほとんどの自民党議員は知りません
そんな自民党の方針に反する働きかけは一切していないからです

 そんな力はないことは彼らが一番よく知っています
 順番が違うのですね
 自民党の方針にあとから自らがのっかるのが彼らの仕事なのです

 たとえば立憲民主党の辻元清美氏・・・
 2012年4月28日、知り合いが講師を務める世界平和女性連合の勉強会に、
当時の秘書と一緒に出席しました
 全然わからなかった、今でも確認できないとしているのに一部で「壺議員」と
まで揶揄された杉田水脈さんの場合は、赤旗でさえその団体名を明らかにできず、実はだれも聞いたことがない名前で、しかも現在はなくなっている泡みたいなダミー団体でしたが、こちらは「世界平和女性連合」と知名度ど真ん中の統一教会の別働の役目を担った団体です
 領収書にはちゃんと「WFWP大阪10連合会」という記載もありました
 仮に辻元清美さんに「あなたは統一教会の意向を受けて慰安婦問題を語って
いたんですね」と言ったら、彼女はこの侮辱的な発言に烈火のごとく怒るかもしれません
 今メディアや共産党が自民党に対してやっていることはそういうことなのです(特に朝日系列が酷いです)

 被害者の支援と救済と今後の被害の予防がすぐにやるべき重要課題であるは
ずなのに、それは議会で多数派を持つ与党と一緒にやらなければならないことなのに、与党に「喧嘩を売って」どうするんでしょうか
結局、被害者の事は自分たちの「政局」のその二の次の問題なのでしょうか

【22/10/12 追記】
悲願の旧統一教会の宗教法人格の剥奪や解散命令は暗礁に乗り上げた感があ
りますが、これまでの野党の対応や働きかけが攻撃的なものではなく、もっと建設的なもってゆきようであったのなら、全然違うかたちになっていたような気がしてなりません

【関連書籍】
「夫婦別姓に隠された不都合な真実」
「選択的」でも賛成できない15の理由   椎谷 哲夫
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784905410652 
   戸籍の「廃止」と「個籍化」を完全否定しない推進派の怪
   地方議会「意見書」に内閣府世論調査を“改ざん”した数字
   選択的夫婦別姓への「異論は許さない」という威圧の危うさ
   大人の理屈と都合で「子どもが親と別姓」を強いられる理不尽・・・